【デザイン経営論】デザイン経営とは?

はじめに

日本経済は長年にわたり低迷を続けており、新たな成長の礎を見出すことが喫緊の課題となっています。このような状況の中、政府は2018年に「デザイン経営宣言」を発表し、デザインの力を活用することで日本の産業競争力を高めようと呼びかけました。では、この「デザイン経営」とはいったい何なのでしょうか。
この記事では「デザイン経営」と、その実践がもたらす効果について詳しく解説します。

デザイン経営とは

「デザイン経営」とは、製品やサービスのデザインを通じて、企業のブランド価値向上やイノベーション創出を図る経営手法のことを指します。従来、デザインは製品の外観を美しく装うための付加的な要素と考えられがちでした。しかし、デジタル技術の進歩や、それに伴う急速なグローバル化が巻き起こる近年ではその役割が大きく変わってきました。デザインは外観だけでなく、サービスやユーザーの体験など、形のないものもコントロールする必要が出てきたのです。
このデザインに対する考え方を取り入れた「デザイン経営」を行うことでどういう影響があるかご説明します。

ブランド価値の向上

デザインは企業の価値観や意思を表現し、ユーザーにそれを伝えるための重要な手段となっています。製品やサービス、購買の動線などのあらゆる顧客接点において一貫したメッセージを伝えることで、強力なブランドイメージを構築することができます。優れたブランドイメージ、ブランド価値は、顧客の信頼と支持を獲得し、長期的な収益につながります。
また、顧客の支持が厚いブランドは、SNSなどで自然に広まっていきます。自社の広告活動だけでなく、ユーザーの力を借りてブランドの認知を獲得していくことも可能なのです。

イノベーションの創出

デザインは、人々の潜在的なニーズを発見し、新しい価値を生み出す原動力にもなります。デザイナーは企業側の思い込みにとらわれることなく、とことんユーザーの視点から観察することで、気付かれていない課題や価値を発見し、掘り起こすことができます。そして、その見えてきた課題、ユーザーのニーズと企業の価値観を照らし合わせながら、革新的な製品やサービスを構想することが可能になるのです。

デザイン経営の実践

では、具体的にどのようにデザイン経営を実践すればよいのでしょうか。ここでは、主要な3つの要素について解説します。

  1. 顧客体験(UX)の徹底的な追求

    デザイン経営では、製品やサービスの利用時における顧客体験(UX: User Experience)の質を極限まで高めることが重視されます。美しいデザインはもちろんのこと、使いやすさ、機能性、快適性など、あらゆる側面から顧客満足度を徹底的に追求する必要があります。
    どれだけ見た目が美しい製品でも、使いにくかったり、購買までの動線が遠かったりすると、ユーザーは手を伸ばしてくれなくなってしまいます。
    目に見えないのでコントロールが難しい部分ではありますが、分かりやすく、ストレスフリーなUXは、評判や売上に直結する大事な要素です。

  2. データ活用によるスピーディな改善

    IoTの進展により、製品やサービスからのデータ収集が以前よりも格段に容易になりました。収集したデータを活用することで、顧客の利用実態を詳細に把握し、UXの課題を特定できます。さらに、そのデータに基づいてデザインを迅速に改良することで、よりよいUXを短期間で修正、実現できるようになります。
    最初から完璧なブランドなどありません。データを活用し、しっかりと改善を行っていく。そのサイクルでブランドは育っていきます。

  3. 技術とデザインの融合

    先にも述べたように、近年では外観を整えるだけではなく、デザインの持つ役割の幅が広がりました。単なる製品のデザインにとどまらず、プラットフォームやデータ活用の仕組みまでをデザインの対象とすることが重要です。AIやIoTなどの先端技術と、デザイン思考を組み合わせることで、課題を発見し、ユーザーの潜在的なニーズに応える革新的なソリューションが生み出せるのです。
    人が持っている感性の部分と、技術の進歩によるロジカルな部分を組み合わせることで、変化の激しいユーザーのニーズ、世の中に対応していけるのです。

デザイン経営が切り開く未来

デザイン経営を組み込むことで、日本企業は大きな付加価値を生み出し、世界に対抗することができるでしょう。企業の優れたブランド価値とイノベーティブな製品・サービスにより、グローバル市場での戦うことができ、唯一無二の価値を生み出すことが期待できます。

加えて、デザイン経営は新たな雇用の場も生み出します。昨今AIの進出が話題に上がっていますが、必要とされるのはAIがまだまだカバーし切れない領域です。プロダクトデザイナーやUIデザイナーはもちろん、データサイエンティストやデザインエンジニアなど、新しい専門人材への需要が高まるでしょう。

国内外に「それなりに良い企業」が乱立する昨今において、日本の企業が直面する課題を打開し、新たな繁栄の道を切り開くためには、デザイン経営の視点が必要不可欠です。政府が掲げたこの方針は、まさに日本経済の起爆剤となる可能性があり、今後必要不可欠になる考え方だと思います。企業や個人が積極的にデザイン思考を取り入れデザイン経営に取り組むことで、日本は世界に誇れる創造力溢れる国になると確信しています。

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